今回は勉強会をすることに至ったとても大事なエピソードを記事にさせていただきます。
勉強会をアドバンスまで受講された方は、詳細までお伝えさせて頂いていますね。
整形外科からのコーディネート依頼
今でこそ減少しましたが、当時私は医療コーディネートを交通事故専門として対応しておりました。
紹介や、ツテでご依頼いただくこともありましたが、中には整形外科からの患者紹介もありました。
その中である一人の女性の事故被害者に出会います。
彼女を A さんとします。
・事故受傷をして半年以上経ってから、その整形外科を受診してます
・ このままいくと、手術適応になるが、事情が複雑なので話を聞いてあげてほしい
ということでしたので、お会いして事情を伺いました。
・交差点で自動2輪車と事故にあっている
・痛いのは右手首
・当初は救急病院に搬送された
・その後は近所の接骨院に通う
・接骨院では「交通事故を診れます」という言葉をもらったので信じて通院していた
・事故で受傷してから、3日後から手首に痛みが走るようになり、そのことも接骨院には報告していた
・実際には接骨院で具体的な治療を行われず「そのうち治ります」もう言葉で終始締めくくられている
・2ヶ月が過ぎ、痛みが残っているのでそれを訴えても、接骨院に面倒がられて打ち切りになってしまう。
・それでも痛いことから、近所にある「外科」の表記があればいいものだと思い、「胃腸外科」に通院。やっと手首のレントゲン撮影になった。
・最初の救急病院への搬送においては、受傷直後であるが、手首への痛みは判然としていなかったために、病院側に訴えておらず、当然ながら画像診断もされていない。
・胃腸外科でのレントゲン撮影においては、判然とした病態が確認をされなかったが、日を追うごとに症状が強くなることから、胃腸外科から整形外科医の診断を促される。
その後被害者本人が、交通事故外傷を取り組む整形外科として探して、今回の紹介の元整形外科への通院と至ります。
ここから杉本が医療コーディネートとしてフォローすることになります・・・しかし・・・
待ち構えていた厳しい現実
今回の紹介元整形外科においては、XPから判断出来る病態を MRI で詳しく検査されていました。
結果的に TFCC に損傷が疑われ、症状も強いことから、専門医によるオペも視野に入れて「手の外科専門院」紹介も行われます。
それにより、手の外科の権威であるドクターのところへ、コーディネーターとして受診同行します。
強めのステロイド療法による治療と並行して、痛みを伴う造影剤を使った画像診断等々、Aさんは頑張って受診しますが、3度目のステロイド療法も効果がないことから、手術に至りました。
それがキャッチに使っている写真で行われた、尺骨一部を切除する「サージカパンジー術」です。
症状の元がある、遠位橈尺関節は固定されましたが、どうしても別の痛みが腕に走るようになり、重量があるものを持つことができない状況が続きます。
オペ後は「長管骨に奇形を残したもの」としての後遺障害を、正当に判断してもらうべく、申請します。
これが認められれば12級の後遺障害です。
しかしながら結果は非該当。
なぜか分かりますか?
非該当の理由書には
①最初の救急病院での記載は無い
②接骨院からも手首の痛みによる記録が報告されていない
③手首に一番最初に画像診断がされたのは事故から数ヶ月後の胃腸外科
④その後の整形外科及び手の外科での資料には、確かに症状を裏付ける画像所見があるが、事故後に痛みに関連する記載証拠がないので、ない事故によるものとは判断できない
とあります。
こういった場合、①に関しては医学的に整合性が取れているので、反論し覆すことができます。
しかし③の原因になった②においてはどうでしょうか?
こうなると一つしか望みはありません
最後の望みをかけて記録が無いか?と接骨院に確認する
本人の強い希望もあって、一緒に接骨院に同行します。
当時 A さんを診ていたB院長は、雇われだったこともあり、現在は東海地方で開業していることが分かっています。
従って確認は引き継ぎの C 院長になります。
訪問しC院長に対して A さんのカルテを確認してもらいます。
出てきた資料には、痛みを訴えていたにもかかわらず、記載がありません。
それどころか、療養費も同じフォーマットで残しているのかも知れませんが、とてもじゃないですがカルテとは言えない代物の記録方式しか残っていないのです。
つまり「自賠責は自由診療だからカルテ書かない」でもなく、療養費でも、患者へ行ったことを記録する事すらキチンと行っていない事が常態化されています。
「これしか残っていないんですか?カルテの表記・・・これだけですか?」
あまりにもお粗末な内容に驚愕しながらC院長に確認します。
「忙しいですから、いちいち書いていられないですよ」
怒りの衝動を抑えながら、もうこれ以上はここにいても無駄だとして、同行を終了します。
その後、異議申し立てを行いますが、否定の①は EBM があるので論破できますが、時間経過・医療記録の問題である②は覆すことができません。
最終的に A さんは疲弊してしまい、精神科領域の疾患にかかってしまいます。
もちろん、弁護士に依頼しても、医療従事者が公的な書面が揃っていないので、民法709条の観点からも、打つ手がありません。
因果相当関係の立証が出来ないのです。
何が A さんの人生を変えてしまったか?
お分かりになりますよね?
適当な対応を行った接骨院によって、彼女の人生は壊されてしまいました。彼女が訴えていた痛みを放置されたことから、体にはメスを入れられ、体の形は変わり、痛みは引き続き背負い、著しく業務をすることも憚られる。
これが「医療従事者という名の二次加害者」の典型例の一つです。
私が経験上知り得る、医療従事者による二次加害行為は、これだけではありません。
ですが、あえて今回このようなケースを紹介している理由は・・・
・交通事故は診れるとして患者に言っている
・患者の訴えを記録していない
・痛みに対して何も施術を行っていない
・病院に対しても紹介を行なっていない
・なにより交通事故を舐めて対応している事への尻拭いを、患者さんが受けてしまっている
からです。
もしもその時に
・痛みに向きあって検査や施術を行う
・長期化する痛みに対して疑問を持って、病院に紹介をする
何よりも
・ せめて痛いと言った場所を記録に残しておく
だけで人の人生が変わったんです。
私が交通事故の勉強会をしているのは、こういったことに至りかねない接骨院が、全国にごまんとあります。
ここまでひどくなくても
・何を記録し
・何を検査し
・何を施術し
・何を書いて
・必要であれば医師に紹介し
・どのように保険会社に報告するか?
こういった知識が曖昧なまま、交通事故を単なる高単価な自由診療ということで採用している接骨院は、少なからず存在している事実があります。
なによりも医療従事者として患者さんの痛みに向き合う・・・一番大切なこういったことがきちんと踏まえていれさえすれば、「じゃあどうすればいいのだろう?」という業務上の疑問が出てきます。
「できない」「やっていない」「やり方を知らない」そんな医療従事者である柔道整復師を非難するのは簡単なことです。
しかし、非難することでもって、何かが変わりますか?
変わらないのであるならば、変えるしかないのです。
ですが、未だに「先生業という名の不幸」の1つで、プライドが先行しているからなのか「知らないということを知らない」という最大の不幸が蔓延しています。
だから私はこのように表現しています「文化をアップデートする」
患者さんに慰謝料が入ればいいでしょう!それは否定しません。
何より慰謝料はこの先もあり得る「継続された治療を行う」ための準備金の意味もあります。
少ないよりもあった方がいい。
でもよく考えてみてください。
交通事故は制度です。その制度の土俵でないと、正しく処理されません。
そこに重要なのは医療従事者が行う一挙手一投足なのです。
でもその一挙手一投足を学ぶ教科書は、ほぼ見当たりません。
(※医療従事者ための交通事故取扱説明書:接骨院編を除く)
そして医療従事者に対して、特にコ・メディカルにおいては「結局は金」程度のレベルのセミナーばかりです。
お金は大事ですけれども、お金以外に大切なことが山のようにあります、それが交通事故です。
交通事故を知ってもらい、「知らないことを知らない」事実も知ってもらう。
それが『医療従事者のための交通事故勉強会』です。
何よりも A さんのような二次被害者が、一人でもなくなってほしい。
そこに柔道整復師が関わるなら、なおさらなのです。
本来なら、逃げれる問題でもありません。
患者さんに「交通事故でのケガの施術出来ます」というならば、知らなくちゃいけない知識ばかりです。
知っておきたい!という医療従事者のために、聞き心地のいい忖度で羅列された説明は出来ませんが、真実は誠意をもってお伝えしています。
『医療従事者のための交通事故勉強会:2020年予定』 https://primecare.co.jp/workshop-info/
2月9日(日):東京ファースト・ベーシック
ファースト→9:15~11:50
ベーシック→13:00~19:00
3月1日(日):東京アドバンス 9:30~17:00
3月15日(日):大阪ファースト・ベーシック
ファースト→9:15~11:50
ベーシック→13:00~19:00
3月29日(日):大阪アドバンス 9:30~17:00
4月19日(日):ElitePlus福岡 9:30~17:00
5月31日(日):ElitePlus東京 9:30~17:00
※HP内専用ページにて詳細発表済み
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