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制度の上で「使える・使えない」ではなくて、把握すべき現実問題

Twitterを見ていて、有名な整形外科の先生が「交通事故における鍼灸師」について、ツイートされてました。
その中で、返信に鍼灸師からのが投稿されてます。

この問題に関しては、拙書『医療従事者のための交通事故取扱説明書:接骨院編』でも触れていますし、勉強会でも判例を照らし合わせて説明しています。

あえて今回は、こういった論調の際におけるパターンを考えてみます。

まず採用されるのは

自賠責保険規定における、柔整・鍼灸・あま指師の施術項目の記載があることです。
この項目に「必要かつ妥当な実費」として付随文があるので制度上認められるから・・・というのが、その主張の根本のようです。

それはそれで「制度」という視点で見れば、間違った事でも何でもありません。

医師を筆頭とする、医療従事者は「医療を通して地域貢献する職務」であると理解しており、その職種を選んだことから
「患者さんへ自分が出来ることがしたい。その上で、自分の生業を充実させたい」
という気持ちがあることを否定する要素は微塵もありません。

しかし、元患者・元被害者の立場であり、交通事故の表裏を見てきた私としては、その気持ちが空回りし、逆効果というケースも経験しています。

なので「ちょっとまって」と一拍おかざるを得ないこともあるのです。

そもそも交通事故における「医療・医療類似行為」の費用は

民事損害賠償になります。
勉強会で、冒頭部分でお話する「民法709条」が、全ての根幹であり、医療従事者がこの法律と周囲の法律・制度への理解不足から、起きなくても良いトラブルの発生という実態があります。

勉強会や、様々な所で、医療従事者がかかえるトラブルの相談を受けますが、その大半がここの部分の理解不足が発端となっています。

なんで払われるのか?払われないのか?

自賠責保険の制度ではOKでも、裁判でNGになるケースがあるのは何故か?

昨今では、診断権を持っている医師が診断し行った治療費も、自賠責保険からの(正確には統括する自賠責損害調査事務所の判断だが)回答で、否定されているケースも出てきています。

医師の診断=絶対にOKでも無いわけです。

払われないケースで最悪なのが

「これだから交通事故患者はイヤなんだ」と、濡れ衣を着せられるがごとくの、とばっちりを患者が受けるケースです。

症状がキツイと主張する割に、コミュニケーションが円滑とも言えず、その上で治りも悪い。
保険会社は煩いし面倒で、しかもあげくの果てに金払いが悪い・・・最悪だ!

・・・気持ちは分かりますが、いろんな議論がすり替わっています。

そもそも正確には、損害賠償は後でまとめて精算するのですから、任意一括である必要も本来はありません。
下手に財布の紐を握られるので、保険会社の兵糧攻めに、右往左往させれれることは、望ましきことでも無いのです。

でも、費用の代替負担があると通院しづらい人もいるわけで、一応は任意一括請求が主流になっている。

なんとも消化不良になりそうな、この制度。
これも、交通事故事案における現場トラブルの発端でもあるわけです。

軌道修正すると

先にまとめ的になりますが、こういった議論で足りないのは、自賠責保険制度ではなく「民事損害賠償」を考えなくてはならないということの認識が浸透していないって事です。

払われないケースの多くは、制度・法律の観点から不足事項が多いので「払う必要が無い」という判断に至っていて、その問題の芽を摘まないと、いつまで経っても解決はしません。
(まぁ、単に保険会社が払いたくないって駄々ゴネってケースも多々ありますが)

では、交通事故の払う払われない問題で、鍼灸のどこが争点ポイントになるのでしょうか?
ズバリ「東洋医療は立証が苦手」という側面を持ちます。
別に、東洋医療disの思考ではありません。
細かな事は、勉強会でしか申しあげられませんが、裁判所がなぜ医師の診断を第一優先して採用するか?にも通じる事です。

この理解が進まないと、交通事故事案での鍼灸施術の可否問題の解決には至りません。
ハッキリ申しあげると、土俵が違う理論で解決しようとしても無理があるんです。

自賠責保険では鍼灸が認められている」という主張は
『土俵が違うという』
回答になってしまいます。

とかく、医療従事者は自分の土俵で考えるクセがある

例えば健康保険に関する改定で、診療報酬をもっと上げて・・・等々の、従事者サイドの主張を見ます。

私、社会人になってから後々に患者から医療界に入っているもんですから、未だに患者としての思考パターンがあります。
やれ点数のアップだ何だと聞きますが・・・「それ、その分は患者も払いが多くなるってことよね?」と、見ていて思います。

資本主義社会で生活している患者からすれば「値段上げるならその分はサービスよくなるんだよね?」と思考する人がいても否定できないとおもいます。
ですが、なぜか医療は、その思考を咎める風潮が無くは無い。

「医療(もしくは医療類似行為)を受けるのに、なんで払うことをためらうのか?」と言わんばかりのマウンティングはチョイチョイ見ます。

例えば再訪院へのコメント問題があります。
経過を診ないといけないので、3日後にまた診察が必要な場合があったとします。

・3日後に診せて
・3日後にまた診せてもらいたいんだけど来れる?

これ、一目瞭然で、後者の方が患者は好印象です。
前者はくり返すと、評判に繫がるリスクがあります。

多忙な中で、いろんな事が埋没する、
その中で、それ以上の言葉の使い方は間違ってないとは思っての発言でしょうけど・・・患者としては「通院はそれなりに負担になる」と思っている人は、少なくないはず。
特に、症状がきつかったり、社会人として多忙な場合。

「診なきゃ分からない」というのは分かりますが、患者の事を考えるとスムーズに行く事もあることは理解されても、損は無いはずです。

多忙な場合は、こういったことは後回しになりがちですけどね・・・。
でも、自分の土俵が絶対正義でも無いわけですから。

知って欲しいのは「自分の土俵だけでは解決しない」

凄く遠回りになりましたが・・・
東洋医療を交通事故損害賠償に持ってくる際の議論は、自賠責保険制度云々ではないと思っています。

なぜ認められる・認められないを深慮すれば、解決索は見つかります。
ただ、東洋医療と西洋医療の特徴を理解し、賠償観点から考えればいいんですね。

「こうすれば出る」の絶対回答は存じませんが、どのように対処するのヒントは、書籍や勉強会で出しています。

まずは「自賠責制度にある!」は捨てて下さい。

それ、最終的に困るのは患者さんになったりしますから。
(これも、勉強会でちゃんと話しています)

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