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医師の診断でも自賠責保険が「治療を認めず!?」

HPとブログのお引っ越しが完了しました。
まだまだ手を入れていきますが、今後とも宜しくお願いします。
アメブロの過去記載分も、コチラに徐々に、お引っ越ししてくる予定です。

さて、記事を溜め込んでいる間にも、バンバン記事ネタが舞い込んできています。
今回は、新規改装後ということで、ちょっとレベルの高い記事を・・・。

まず表題になりますが、医師の診断権の元で治療しても、自賠責保険が支払を拒否するという、事例がありました。

概要としては
・交通事故患者が「クリニック」と「接骨院」通院していた
・最初は接骨院。誘導もあったのかは分からないが、医接連携として整形外科にも通院
・ただし期間として重複したのは1週間程度。後半は2ヶ月ほど整形のみ
・車両の破損も著しく、相応の外力が加わったと思わしき車両損壊の証拠もあり
・しかし相手側保険会社が任意一括請求による治療を拒否。「速度がさほど出ていない」が理由の一部に
・それにより、事故被害者は「自分で負担しなくてはならない・・・」という負の条件により、満足な治療も受けられず、ほぼ1ヶ月に1回程度しか受診がされて無い(出来なかったと主張)
・自賠責保険からも否認され、異議申し立てするがそれも否認(今回添付画像)

一番の問題は、医師が診断したにもかかわらずの否認・・・これがインパクトが大きいかと思います。

しかし、私も交通事故の事案を見てきていますのが、たとえ医師が診断したとしても、それが100%認められるとは言えないケースも多数見てきていますので、何ら不思議な事はありません。

今回の事案についての、私の分析ポイントは以下になります。

①そもそも「医接連携」が不味かったのか?
→私が昔所属していたNPOならば、根拠無く開口一番「あんたが接骨院に通っていたから、否認された」と言っているかも知れません。
しかし「医接連携」自体に、否認要素が無いのは、自賠責損害調査事務所からの審査文章を見れば、どこにも記載されていないので明白です。
否認要素を読み込めば、見えてくるモノもありますから

②「車両の速度」が否認原因とされているが・・・
→基本的に、自賠責損害調査事務所からの回答は「あとでとってつけた様な理由」で構成されていることが多いです。
つまり、理由が整然としておらず、医学的にも所見が有って複数の医師が診断していても「有意な医学的所見があきらかではない」と話が通用しないようなレベルが
常態化しています。
本件も、車両損壊をアジャスターが確認しており、損壊程度が明確でいながら「速度が出ていない」と。

しかし因果相当関係の立証としての否認なら、どれくらいの時速だったかを呈示するのが筋なんですが、されていません。

③主張には「日常生活の支障報告」は有効なのか?
→裁判であれば、裁判官が多少は耳を傾けてくれますが、自賠責損害調査事務所への主張としては「ハッキリ言って無駄」これは、私は10年前から被害者に言っています。
弁護士は、補助資料として提出させたがりますが、私はむしろ「やり過ぎると逆効果」ですか無いケースが多いと判断しています。
というのも、主張と必ずしも医学的所見が合致しないことも多いので、むしろ「大げさに言っている」という印象を与えかねません。

医師の診断書の補助資料にしたい気持ちは理解出来ますが、私が医療コンサルティングする場合は、私は時間を相当かけて吟味するくらいです。
要は、ここは難しい。
対自賠責損害調査事務所には、基本的に出させません。裁判もしくは「自賠責紛争処理機構」への申し立て(調停扱いとなり記録が残る)くらいです。

④月一通院はどのように評価されたのか?
→悪影響になったとしか思えません。『医療従事者のための交通事故取扱説明書:接骨院編』でも書きましたが、自賠責保険内規には1ヶ月の治療空白で「自動的に
症状固定とみなす」という文言があるそうです(これに関しては、代理店である私でも閲覧不可)。それは「継続した治療履歴が無い=症状が無い」とみなせるから。
このスタンスなので、いかに任意一括が否定されたとしても、追い風にはなりません。
これは裁判も同様です。

「じゃ、自己負担して通院するべきだったのか?」その通りです。
本来の、日本国内の損害賠償における補償は「後払い」が基本なのは、医療従事者を始め、多くの方に周知されていないこと。
自賠責保険だけが特別扱いになっているだけで、ほかの賠償保険の場合は「任意一括」は、基本的にありません。

「交通事故の事はなんでも相談してください」とアピールする医療従事者サイドが、それすら理解してないケースも散見されています。

⑤一部で流行った「被害者請求」はこの様な時に使えるのか?
この様な、治療費不払い問題の際に主張をされ始める「任意一括を外して、自賠責保険に直接被害者請求を行う」というスキーム。
使えるのか?

はい、使えません。
任意保険会社も自賠責保険も、仲良しこよしの同体的関係性があります。
否定決定されているモノに支払はありません。

そもそも、自賠責損害調査事務所の職員のに、保険会社出身者が多数構成されている事実をきちんと理解しておれば、交通事故被害者のための手段として
「被害者請求」を安易に行う事は、「意味無し」もしくは「逆効果」ということを理解出来ます。
「目の前の治療費が払われれば良くて、患者の解決なんて二の次三の次」ならば成立しますが・・・

では、「どこに原因があったのか?」として核心的なことに触れます。
資料を拝見しただけですので、今回は憶測でしかありませんが、たぶんそんなにぶれていないはずです。

勉強会でアドバンスコースまで来られた方は、内容を思い出すと「あぁ・・・あそこの事が、そうなるんだ」となります。

ズバリ、制度法律に則った請求において「医証」が不十分だった可能性が考えれます。
これは、医師も柔道整復師も。

医師の方が否定されているので、これは医師が作成した医証の不備の可能性があります。
逆なら、柔整師の医証問題になります。
医師の医証不備の場合は、双方がNGになって然りになります。

それだけ診断権というのは、影響があるのです。

今回の異議申立には、医師からの意見書が提出されております。
その内容をみても、実は私が拝見しても「医学的所見の立証としては乏しい」と判断しました。

受診時に、どこに硬結点があったり、自覚症状があったりと記載はありますが、肝心な「有意な医学的所見」とのヒモ付けがされていません。
この類いの書類は、非常にハイレベルな作成力を問われます。
作成するコンサルティングをする私から見ても「意見書」が及第点になっていないのです。

そしてこの意見書と、医証としての「カルテ」「自賠責保険様式:診断書」「自賠責保険様式:診療報酬明細書」が同レベルであるならば、否定材料を先方に渡してしまっている状況。

全ての医証ならびに、自賠責保険に残っている「事案整理票」を拝見しないと、確証にはなりませんが・・・
概ねこの傾向になっていることからの否認が考えられます。

勉強会やトリセツの礎になっている、私がなんども説いている「民法709条」を思い出して頂くと、今回の原因や、医療従事者が行うべき医証確保の対策が見えて来ます。
勉強会ではアドバンスコースまでで、出しています・・・損害賠償上必要な、医学的所見項目も。

入金トラブルの原因の多くは、医療従事者にも問題があるケースが散見されています。

既参加の先生方は、思い返して頂くと、今回の記事の流れが良く理解出来ると思います。

最後に・・・
この被害者さんが解決するには・・・元損保職員さんとも協議しましたが、裁判しか方法が思いつきません。
その場合でも、これまでとは違った「医証」は必要ですし、着手金等の費用も考えねばなりません。

深く考えて頂きたいのは、その原因が医療従事者にあるのなら、患者さんが尻ぬぐいさせられる・・・というのが実態と言う事です。

<まとめ>
・医師の診断でも、治療費は否認される
・その条件としては「民法709条」の原理原則から外れた場合に、発生する事が多い
・今回は医療従事者が巻き込まれたが、医療従事者の知らない所で類似現象は散見される
・類似現象の原因になった医療従事者を「医療従事者という二次加害者」という
・二次加害の回避や、トラブル回避の知識、なによりきちんと交通事故を識るのであれば、勉強会へ

 

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