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支払われない治療費:一体、誰が悪いのか?

少しずつ、情報出している新コース「ElitePlus」ですが・・・このコースが出来る事で、受講者以外からの質問が来た場合は、回答は差控える方向性で検討しています。

ただ、今回は「あえて晒す」ことに同意頂きましたので、その顛末をご報告します。

Contents

交通事故事案の経緯

・昨年8月の事故

・受傷直後は病院へ

・接骨院へは1ヶ月後の9月に受診

・1次診察では「頚部」だが、接骨院受診時は「頚部」「腰部」

・接骨院としては、必ず医接連携をするが、既に1次院には通院していないとの事で、2次院として連携先病院を紹介

・任意一括の協定時に問題となった「腰部」。これに関しては2次診察でも、疼痛を確認

・保険会社との話にて主張するが、上席稟議上げてもNG

・受傷時19歳の女学生の被害者であり、父親が窓口になるが治療期間中に20歳(成人)。

・とりあえず、症状があるので治療はして欲しいと希望される。しかし保険会社が拒否しているので、父親と保険会社で話し合ってもらう様に促す。

・話すが、頑として保険会社はNG。理由は、受傷して1ヶ月以上経っての症状の訴えは認めない

・女学生は「最初の病院から言っていたのに・・・相手にされなくてカルテにも残っていなかった」

・接骨院としても、気の毒とは思い、「治療をするが、支払われない場合は自己負担になりますが、いいですか?」と父親にも確認をする。「どうかお願いします」と懇願され治療。

・半年経って、治療は打ち切り。当然、保険会社からは入金されない。接骨院での治療費は半年分の腰部の治療費は約8万円。
・ここになって父親が豹変。「8万円なんか払えない。じゃあ、なんで最初から健康保険を使うとかしなかった?」と反論。「いまから健康保険使えば良いじゃ無いか!」とまくし立てる。
ちなみに・・・父親は聖職者だそうです・・・
・「健保は過去適用出来ません」「使っても約6万円程度しか、圧縮出来ません」「健保を双方使って医師連携も認められなくなる」と丁寧に説明

この状況で「杉本先生の勉強会に出ていて・・・いや・・・僕、なんか間違っていましたか?」と、
半ベソでTELしてきたので、回答しておきました。

ではでは・・・ここに出てくる4者を、遠慮・忖度無く、バッサリ斬り解説しようかと思います。

まずは最初の病院

はい、医療者サイドにおいて、事の発端を作ったかに思えるのはココ。

ポイントは、女学生の「腰も辛いって言ったのに・・・」
そうなんです・・・交通事故損害賠償は、全てを性悪説の元に、重箱の隅を突きます。
「症状的に大した事ないだろ」としてスルーした事が、あとで揉めるパターンです。

医療従事者全体が「交通事故でやってしまう」事の代表格。

確かに、他覚的所見がハッキリせず、傷病名が付けづらい事が多いのが交通事故外傷ではあります。
しかし、過去の交通事故事案での悶着を思い出して貰えば、この「軽度と診断した事を蒸し返してくる」という経験は少なくないと思います。

では、ここでどうしたらよかったのか?

これは単純で「痛みの箇所の訴えを記録しておけばよかった」になります。
ここで残しておけば、その後に悪化しても改善しても、紐付けが出来ます。

教科書的な症状との整合性を、受傷直後から立証しなくてはならないという先入観が、臨床現場の交通事故対応を
複雑化している、誤解です。

「交通事故の治療として立証するには、外傷性の疼痛だと立証しなくてはいけない」と思われがちで、
「交通事故が原因のケガとして診断書書いて下さい」と、半ばモンスター化した患者に迫られると、
免許上の責任との拮抗で、対応し辛くなります。

根本的には、医師診断で「外傷性」を立証する必要は無いのです。
それは民法709条の観点からしても、その立証は患者の仕事です。

なので、あくまで「症状を訴えていた」とだけすれば、問題が複雑化しないのですが・・・どうも、誤解が多いのが実情です。

治療を継続するしないに関わらず「訴えはとりあえず全部記録しておく」
これで、自身もその後も守れる事です。

先に申しあげますが、2次診察を行った病院に問題点はありません。

君も成人になるんだから、自分の事は自分でする歳だよ

まだ、社会を知りきっていないですが、自分の事は自分でしなくてはならない年頃ですよ、女学生さん。
言い訳は出来ないのが、社会のシステムです。

民事交通事故損害賠償は、民法709条が根幹にあるので、自分の負ったケガの治療の証明は
自分でしなくてはなりません。

それは保険会社でも、病院・接骨院にも責任があるものではありません。
例え、貴方が事故被害者でも、それは逃れられません。

大半の医療従事者も、この立証責任を理解していない事から、医証等の協力性が乏しいかも知れませんが、その上でも責任は本人です。
痛い社会勉強かも知れないですが・・・これが現実なんですよね。

ともすると、結果論になりますが・・・
交通事故の費用を立証する責任は、被害者本人にあって医療従事者はそのお手伝い。
自分で「痛い」ところをしっかり主張して、とどめておかないと、どうしようも無いのです。

「賠償」ってそんなもんなんです。

勉強会受講済みの柔道整復師はどうだったか?

流石に、基本はやっておいてくれてはいました。
医接連携はしているし、健康保険の過去適用を拒否したのは間違っていません。

この場で出せる、簡易的な回答としては1つだけ・・・
「性悪説になぞった対応が、もう少し足りなかったかな?」

お父さん・・・そもそも論だけど・・・

ハイ、一番興奮していらっしゃるお父さん。
・・・私も人の親であって、どこまで親がでるのか?って難しいのが分かりますが、子ども可愛さに現実見ない対応は、かえって事態を深刻化する事もありますよ。

ま、今回の場合は子どもの場合でも、仮に本人の事であってもなんですが、医療従事者から
「これだから交通事故の患者は!」
と嫌われる典型となっています。
あえて同体として書きます。

以下、厳しくもありますが、私自身も交通事故被害者ですし、交通事故の表裏を見てきて、徹底的に問題の根っこを分析したきた身から、忖度無くして書きます。
迎合して書いても、誰にも何の得も無いのでね。

交通事故損害賠償は、制度法律に則らねばなりません。
保険会社は、すべての事案を「仮に、裁判に至ってもいいように・・・」として対応します。

従って、症状の記録を損ねた医師にも対応問題がありますが、前提として被害者自身が立証する事は免れない。
「事故は初めてで・・・」という定冠詞的なコメントは、他の交通事故事案でも、いつも耳にしますが、だからといって各対応や法律が変わる事もでない。

なので、お嬢さんの立証が乏しくなった時点で、責めるのは保険会社でも接骨院でもありません。

そして、今回は書面に残っていませんでしたが、保険会社からの支払が無くても施術に同意したのは貴方です。
払われないからと「なんで健康保険にしなかった?」はお門違いです。
これで「病院や接骨院は、儲けたいから健康保険にしない」という、3流弁護士がネットで書くような論調も違います。

健康保険の摘要にはルールがあって、厳格化すべき公的保険です。
ですので、接骨院が積極採用してこなかったのは理由があって、過去遡及対応することは施行規則違反です。

また、払われないかも知れないからと言う理由では、健康保険を使用するかどうか?・・・という論点は、公的保険の適正使用の観点と、公序良俗しての問題有無からすれば、疑義が載ります。

接骨院の対応には、確かに惜しい点もある。
ですが、間違った事はしていません。

医療従事者は、患者の症状を何とかしてあげたくて対応しているのが大半です。
そういった事が自分の仕事だと、選らんだ人間は逃げずに、コンプライアンスに則り対応します。

言葉悪いですが「困っているから助けて」としておきながら、予告もされたうえで承認した負担を拒否するのは、いい歳した大人がする事ではありません。

「ウチも被害者だから」という反論に関しては「では医療従事者に被害を新たにあたえるの?」と返します。

被害者意識の前に、当事者なんですから、それはすり替えてはダメですよ。

とりあえずまとめ

・事故患者が来たら、とりあえずは訴えをすべて残そう
・外傷医学的には、症状の追認リミットは○○○(←勉強会で話していますね)
・保険会社には民法709条がある限り、立証無ければ支払義務無しという絶対事実からは目を背けられない
・医療従事者も、もっと交通事故理解するべき。これは「お金」を前提した理論から離れないと進歩無い。
・もう一度、交通事故には自賠責保険であり、なぜ「自由診療」なのか?それはどうすべきか?を医療従事者は考えないと、この問題は解決しない。

今回の詳細的な対策や考え方は、「ElitePlus:コースT」でのカリキュラムにも構築中の内容ですので・・・

事の顛末:有料記事
今後するべき考え方と対策詳細:ElitePlusで公開

とさせて頂きます。

ElitePlus講座とは?

「医療従事者のための交通事故勉強会(柔道整復師向け):ElitePlus講座」は、2019年下半期に開催予定。
受講資格は『2016年福岡以降のアドバンスコース既受講者のみ』になります。

開催までのアドバンスコースは、7月7日(日):横浜アドバンス のみとなります。

※勉強会は、長時間になります。
是非、普段着でどうぞ。スーツ着用は勧めません(笑)

※「特別カリキュラム:医師診断を否定した自賠責保険の判断への分析と対策」はアドバンスコースで行います。

※ベーシックコース終了後の19時から「ashibraⓇ体験会」を行います。
ご希望の方のみですが、時間の許す限りashibraⓇを、体験されてみて下さい。
『S03』と『AIR』を持参します。

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『医療従事者のための交通事故勉強会2019:柔整師向け』

横浜ファースト:平成31年6月23日(日)
9:15~11:55
横浜ベーシック:平成31年6月23日(日)
13:00~19:00

横浜アドバンス:平成31年7月7日(日)
9:30~16:45

※すでに受付開始

<場所>
アットビジネスセンター横浜西口駅前 602号室
神奈川県横浜市西区北幸1丁目8−4

<定員>
各会場:30名
(各最少催行人数15名)

<申し込み方法>
https://www.primecare.co.jp/workshop/
①弊社HP、もしくはFBページメッセにて案内PDFを取得下さい。
②FAXもしくは、申し込みデータをメール送信
③承り後、弊社から受付案内を致します(メールもしくはFAX)
④料金は会場にて現金にてお支払い下さい(領収書発行致します)

<メール受付の場合>
HP問い合わせフォームより
①氏名
②所属院
③連絡先番号もしくはアドレス
④取得資格
⑤希望コース
⑥同行有りの場合の同行者氏名
⑦ベーシック終了後の二次会参加希望の有無
をご教示下さい。

<料金>(すべて税込)
ベーシック・アドバンス新規(それぞれ)@22,000円
ファーストのみ一律:@10,000円
同コースの再受講:@10,000円

再受講者との同行またはペア割:@ー4,000円
(お一人当たり、ベーシック・アドバンスにそれぞれ適用)

※交通事故事案を同業者へのビジネス化されている場合は、別途加算料金を申し受ける場合がありますので、ご了承下さい。

<会場限定:書籍特別販売>
「医療従事者の為の交通事故取扱説明書:接骨院編」
@9,000円→特別価格@8,000円(ともに税込み:一人1冊限り)

<ご注意>
・撮影・録音・資料の二次使用は固くお断りします(発覚時損害賠償請求します)
・既に交通事故で商用活動(手法展開・セミナー等)されている方の申し込みは、理由回答によって参加をご遠慮頂く事もございます。
※管理人は「二次加害者」への幇助を一切行いたくないという信念がありますので、ご理解下さい。
勉強会でお会いしましょう

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プライムケア 杉本

株式会社プライムケア代表取締役
<国家資格> ・柔道整復師 ・ファイナンシャルプランナー2級技能士 <各資格> ・生命保険・損害保険募集人 ・EK療法士 ・ashibraⓇ認定アドバイザー

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